はじめに:今もステージに立ち続けるレジェンド
『Frampton Comes Alive!』で知られる伝説のギタリスト、ピーター・フランプトン。彼は2019年、自身が難病**封入体筋炎(Inclusion Body Myositis:IBM)**という進行性の筋疾患であることを公表しました。
それは「引退」の発表ではありませんでした。むしろ彼は、自らの音楽人生を「できる限り最後まで全うする」と語り、実際にツアーとレコーディングを続けています。本記事では、ピーター・フランプトンが直面する病と、それにどう向き合っているのかを詳しくご紹介します。

封入体筋炎(Inclusion Body Myositis)とは?
封入体筋炎(IBM)は、50歳以上に多く見られる慢性進行性の筋疾患です。原因はまだはっきりしておらず、自己免疫反応と変性疾患の両面が関係していると考えられています。
主な症状:
- 手足の筋力低下(特に太ももや前腕)
- 歩行困難、転倒しやすさ
- 指の力が入らない、ものが掴みにくい
- 病気の進行はゆっくりだが、治療法は確立されていない
現時点で根本的な治療法はなく、リハビリや生活支援を中心とした対応が行われています。
フランプトンの公表と決断
フランプトンは、筋力の低下を数年前から感じていたものの、年齢によるものと考えていました。最終的にIBMと診断された際、彼はただちにツアー計画に取りかかりました。
「まだ弾けるうちに、すべての力を出し切りたい。演奏ができなくなる前にやるべきことがある」
── ピーター・フランプトン(2019年)
公表後には「Farewell Tour(さよならツアー)」を実施。多くのファンが彼のステージに涙し、その決意と演奏に心を打たれました。
Never Say Never──希望を掲げた再出発
予想よりも進行が緩やかだったことを受け、フランプトンは2023年に**“Never Say Never Tour(決して諦めないツアー)”を開始。現在は椅子に座った状態**で演奏を行っていますが、演奏の完成度は変わらず高く、観客はスタンディングオベーションで応えています。
特徴的なポイント:
- 懐かしの名曲と近年のブルース作品を披露
- 病と共に生きる人々に勇気を与えるメッセージ
- 音楽を通じた「生きる力」の発信
音楽は生きる力──制作活動も継続
フランプトンは演奏だけでなく、レコーディング活動も継続しています。2006年の『Fingerprints』はグラミー賞を受賞し、近年もブルースを中心としたインストゥルメンタル作品に取り組んでいます。
また、自身の病気を公表したことで、封入体筋炎の認知向上にも貢献。研究支援や患者支援団体との協力も行っています。
まとめ:ギターはまだ彼の手の中にある
ピーター・フランプトンの歩みは、単なる病との闘いではありません。それは自分の「好き」と「使命」を貫く生き方の象徴です。
「あきらめるなんて、まだ言えない。」
── ピーター・フランプトン
病と共にあっても、自分の人生を全力で生きる。その姿は、私たちすべてにとっての希望となるでしょう。