泉鏡花原作のオペラ「高野聖」が11月23日、金沢歌劇座で上演されるというニュースをみました。
「高野聖」って誰でも聞き覚えがあるんじゃないかな?日本の歴史的な宗教的実在と、明治文学の幻想的世界の両方が重なり合ってる感じですネ。
でも意味が分かってる人はどれくらいいるのかな?恥ずかしながら私はわかってません^^;そこで、宗教的な実像と、泉鏡花の小説『高野聖』の魅力を、あれこれと調べてみました。
中世日本の旅する僧「高野聖」とは?
高野山を拠点とした遊行僧たち
高野聖とは、平安後期から江戸時代にかけて、高野山(金剛峯寺)を拠点に日本各地を巡った遊行僧のことです。彼らは勧進(寄付集め)や説法、念仏の布教、納骨の勧誘などを通して、庶民の信仰と深く結びついていました。

浄土教とのつながり
形式上は真言宗に属しつつも、その実践内容は阿弥陀仏への信仰や念仏中心の浄土教的色彩が強く、庶民にとって親しみやすい存在でした。
時代とともに変質
高野聖は当初、宗教的使命感に燃える僧侶集団でしたが、時代が下るにつれて一部は世俗化し、物品販売を兼ねた行商人のような存在へと変化していきました。江戸時代には幕府によってその活動が制限され、次第に衰退していきます。
明治文学の傑作:泉鏡花の『高野聖』
作家・泉鏡花とは?
泉鏡花(いずみ きょうか)は、幻想文学の先駆けとも言える作家で、金沢出身の明治文学を代表する人物です。『高野聖』は彼の代表作のひとつで、1900年に発表されました。
あらすじの概要
物語は、旅僧がある宿で若者に語る回想として進みます。若き日の僧が山中で出会った美女の家に一夜の宿を求めたことから、不思議で妖艶な体験が始まります。
その美女は、男を獣に変える魔力を持つ存在であり、僧は魅了されつつも恐れを抱く一夜を過ごします。
テーマと特徴
『高野聖』は、自然と人間、信仰と魔性、理性と誘惑といった二項対立を描いた幻想文学です。鏡花の筆致は美しく、日本の風土や伝承と密接に結びついた幻想世界を構築しています。
「高野聖」が持つ現代的意義
日本人の精神性を映す鏡
高野聖は、宗教的側面でも文学的側面でも、日本人の心の深層に触れる存在です。山中に潜む妖しさ、信仰の光と闇、人間の欲望と悟り――それらを象徴する存在として、今も多くの人を惹きつけます。
泉鏡花作品としての文学的価値
『高野聖』は明治ロマン主義の傑作として高く評価されており、現代でも多くの文庫本に収録され、舞台化や映画化もされています。幻想文学や日本的美意識に興味のある方には、ぜひ一読をおすすめします。
まとめ
「高野聖」は、日本の宗教史に深く根ざした実在の僧であり、また幻想文学の舞台でもあります。その二重性が私たちの想像力を刺激し、時代を越えて語り継がれる魅力の源となっているのです。
信仰と幻想が交差するこの存在に、あなたもぜひ一度、触れてみてはいかがでしょうか。