日本で「イギリス」と呼ばれる国は、英語では「United Kingdom(連合王国)」と表現されます。しかし、英語圏では「England(イングランド)」という言葉も頻繁に使われており、混乱する方も多いでしょう。本記事では、「イギリス」という名称の由来から、イングランドと他地域の関係、そして今もくすぶるスコットランドや北アイルランドの独立問題までを、わかりやすく解説します。

「イギリス」という呼び方は日本だけ?
「イギリス」という言葉は日本語特有のもので、他国では使われていません。この語源は、16世紀にポルトガル語の「Inglês(イングレス=イングランド人)」が日本に伝わり、それが音訳されて「イギリス」になったとされています。つまり、イングランド(England)に由来しています。
各国での呼び方の比較
言語 | 呼び方 | 意味 |
---|---|---|
日本語 | イギリス | ポルトガル語由来の日本語呼称 |
英語 | United Kingdom / UK | 連合王国 |
中国語 | 英国 | 「英」はイングランドの略称 |
韓国語 | 영국(ヨングク) | 同上 |
United KingdomとEnglandの違い
正式名称は「United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)」。これは、以下の4つの「構成国」で成り立っています。
構成国 | 首都 |
---|---|
イングランド | ロンドン |
スコットランド | エディンバラ |
ウェールズ | カーディフ |
北アイルランド | ベルファスト |
ただし、人口・経済・政治の中心はイングランドに集中しているため、海外では「England」と「UK」が混同されることも少なくありません。
イギリス連合王国(UK)の成立史
UKは複雑な歴史的統合の結果として現在の形になっています。
1. イングランドとウェールズの統合(1536年~)
ヘンリー8世が制定した「ウェールズ併合法」により、ウェールズはイングランド王国に編入され、完全に統一されました。
2. スコットランドとの連合(1707年)
1603年にスコットランド王ジェームズ6世がイングランド王を兼任。1707年には「連合法」により、両国は正式に「グレートブリテン王国」として統合されました。
3. アイルランドとの連合(1801年)
さらに1801年、「グレートブリテン及びアイルランド連合王国」が成立。これが「UK(United Kingdom)」の始まりです。
4. アイルランド独立と現在の形へ(1922年〜)
アイルランドが独立し、北アイルランドのみがUKに残る形となり、1927年に現在の国名が確定しました。
スコットランド・北アイルランドの独立運動の背景

スコットランド:文化的独立志向とEU再加盟希望
- 独自の法・宗教・教育制度がある
- 2014年に独立を問う住民投票を実施(否決)
- Brexitで再燃:スコットランドはEU残留を望んでいたが、UK全体の結果で離脱が決定
北アイルランド:宗教対立とアイルランド統一の声
- 英国統一派(プロテスタント)とアイルランド統一派(カトリック)の対立
- 1998年のベルファスト合意で和平
- Brexitによりアイルランドとの国境問題が再燃し、統一志向が強まる
スコットランドが独立した場合の影響
国際的影響
- UKの国際的地位の低下
→ 経済・人口・軍事の縮小により、G7や国連での影響力が減少 - EU再加盟問題
→ スペインなどがカタルーニャ独立を警戒して加盟に慎重 - NATOとの関係
→ 核兵器基地の移転、加盟手続きの再設定が必要
経済的課題
- 通貨の選択
→ ポンドを使うか新通貨か。経済安定性に大きな不安 - 財政赤字と国家運営コスト
→ UKからの財政支援がなくなり、行政・軍・外交に莫大な初期コストがかかる - 企業流出の懸念
→ ロンドン本社企業の離脱、貿易コストの増加 - 石油依存リスク
→ 北海油田に頼るが、脱炭素の世界的流れに逆行する恐れ
おわりに
「イギリス」と一言で言っても、実はその内実は非常に複雑で、歴史と政治が深く絡み合っています。今後のUKの姿は、スコットランドや北アイルランドの動向によって大きく変わる可能性があります。これらの問題は単なる国内政治にとどまらず、国際関係・安全保障・経済にも大きな影響を与える重要なテーマです。